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観念要素の更改をするための自己暗示誘導法

中村天風氏の本を読んでいると「観念要素の更改」という言葉がよく出てきますが、ちゃんと理解しておかないと、中村天風氏の本を読んでいても「?」となるページが多いです。

中村天風氏の本を読みやすくするために、「観念要素の更改」と「自己暗示誘導法」をご説明します。

自己暗示誘導法とは

自己暗示誘導法とは、自己暗示と暗示感受作用を応用した、観念要素を更改させるための現実的な方法のことです。「観念要素の更改=自己暗示誘導法」と考えてOKです。自己暗示誘導法は以下で構成されています。

「(イ)聯想(れんそう)暗示法
(ロ)命令暗示法
(ハ)断定暗示法
(二)附帯要項
 其一、日常の言行
 其二、感謝の生活と三行
 其三、三忽の実行(怒らず、怖れず、悲しまず)(中村天風、真人生の探求p121)」

観念要素の更改とは

「観念要素の更改とは、潜在意識領の浄化を期成することで、分り易くいえば、心の倉庫の大掃除をして、古い役にたたないものや、あるとかえってよくない結果を心に与え延いて生命全体に与えるものを、真に役立つ価値あるものと入れ替えるということになるのである。
もっと、通俗的にいえば、一箇の樽の中に入れてある水に、塵や埃やその他の汚物が混入し、ぼうふらやその他の細菌類が充満した時、その樽を完全に洗い浄めて、更めて新鮮な清水を入れ替えると同様のことが、この観念要素の更改ということなのである。(中村天風、真人生の探求p114~115)」

観念要素の更改とは、潜在意識をきれいに掃除し、良い観念要素と入れ替えることを意味します。潜在意識の中にある古くて役に立たない観念要素や、あると悪影響を及ぼす観念要素を、本当に役立つ観念要素と入れ替えていくのです。

汚い水が入っている樽やコップをイメージするとわかりやすいです。汚い水をきれいにするには、樽やコップを掃除して、きれいな水と入れ替えますよね。これが観念要素の更改です。

「どうすれば観念要素の更改ができるかということについては(中略)「人間の精神に固有する、暗示感受作用を応用する特殊の自己暗示誘導法」という方法を提唱する。(中村天風、真人生の探求p115)」

観念要素の更改をするには、自己暗示誘導法が有効ですと記載されていることからも、「観念要素の更改=自己暗示誘導法」と考えてOKだと考えています。

観念要素とは

観念要素とは、潜在意識の中にある思考を組み立てる要素のことを意味します。考えるときの材料と考えてください。

観念要素は感応性能に反映される

「人間の心で営まれるいろいろの思考作用は、すべて一切この観念要素というものが、その組織の根帯を為すということと、更に随時随処その心で営まれる思考作用というものが、一々物の声に応ずるように感応性能に反映する(中村天風、真人生の探求p110)」

人間はいろんなことを考えますが、思考作用というものは観念要素がベースとなっています。また、思考作用はすべて感応性能に反映されます。

現代人が考えることの99%は消極的

「思ったり考えたりすることがすべて積極的ならば、敢えて何も言うところはないのであるが、もしもその思うこと考えることが、消極的である場合は、前に述べたとおり、心で行われる思案の一切が、一々最大洩らすことなく感応性能に反映する関係上、消極的の思考は直ちに感応性能を消極化してしまうのである。そして、その結果、また当然精神生命をも消極化してしまうのである。(中村天風、真人生の探求p111)」

積極的なことを考えれば、感応性能も積極的になるので、積極的な心を作ることができます。しかし、消極的なことを考えると、感応性能まで消極化されてしまうのです。その結果、消極的な心になってしまうのです。

人間の思考は観念要素がベースとなる

「人間の思考作用というものは、心の深部で行われるのでなく、心理学的にいえば、実在意識領と称する分り易くいえば、心の第一層面(心の表面)で行われるものなのである。この思考が心の表面の実在意識領で行われる時、実在意識領の単一な作用で、種々雑多の思考がその領域自体から発動するのではないので、実在意識領が、何事かの反応なり刺戟を受けて、思考作用を行おうとすると、突嗟これに応じて、心の深部にある心の倉庫ともいうべき処から、その思考を組立てる材料要素を実在意識領に運び込んで、そこで一個の思考型態が具体化するものなのである。
心理学上からいうと、この心の倉庫ともいうべき心の深部にあるものを、実在意識に対応して潜在意識と名づけ、思考を組立てる材料となるべきものを観念要素と呼んでいるのである。
であるから、実在意識と潜在意識とは、常に一連の結合をなしている不可分のもので、人間の思考には、特にこの潜在意識領内に保有される観念要素というものが、殆んど皆その因子を為しているといってよいのである。(中村天風、真人生の探求p112~113)」

人間の思考というものは心の奥深くで行われるように思いますが、実は心の表面部分で行われています。

思考は「実在意識」で行われますが、「実在意識」だけで思考が完結しているわけではありません。実際には、心の奥深くにある心の倉庫である、「潜在意識」の中にある「観念要素」を呼び出して、思考しているのです。

なので、潜在意識の中にある「観念要素」が、人間の思考のベースとなります。だからこそ、「観念要素の更改」が大事という流れとなるのです。

観念要素が消極的だと、積極的な心を作れない

「潜在意識内にある観念要素が、消極的のものを多分に保有していると、イザという時、どんなに積極的に物事を思考しようと努力しても、不可能に終ることになるのである。(中村天風、真人生の探求p113)」

観念要素が消極的なものだらけだと、積極的なことを考えなければいけないときに、どれだけ努力しても積極的なことを考えられなくなります。

感応性能を積極化するために、観念要素の更改が重要

「積極精神作成の先決要項である感応性能の積極化を現実にするには、実在意識領の思考作用を積極化する必要上、潜在意識内に保有される観念要素の更改を具体化しなければならないことになるのである。(中村天風、真人生の探求p114)」

積極的な心を作るための第1条件でもある感応性能を積極化するには、実在意識の思考を積極的にするために、潜在意識の中にある「観念要素の更改」をしなければいけません。

疑い深い人も自己暗示誘導法を使えばOK

「人間は疑い深い心理を習性的にもっている。そのため自分自身充分よくわからないことに対して、最初から全然白紙のように、純真に中々それを信じ切れない。特に、いささかでも理智教養を受けたものは一層この傾向が顕著である。(中村天風、真人生の探求p115~116)」

人間は、疑い深い習性を持っています。そのため、自分がわからないことは、全然信じることができません。

私も数学が苦手でしたが、もう公式の理屈がわからないのでそこで思考がストップしてしまい、先に進めないということがよくありました。この疑い深いという習性があるので、いろんな知識を知っても苦しみ悩んでしまうのです。

なので、どれだけ素晴らしい教えでも、実際にその効果を得なければ、確信を持って取り組むことができないのです。

しかし、その素晴らしい教えを疑ってしまうので、結局素晴らしい教えを実践することすらできないのです。実際に効果を得る前に取り組むことができるのは、心が出来ている人か純真な人だけというのが現実なのです。

「この方法(自己暗示誘導法)に依ると、どんなに疑い深い人間でも、疑う傍らから何かの効果事実が、自己の意識領に大なり小なり手答えを与えてくれるので、いつの間にか今まで抱いた疑心も事実の前に屈服してしまい、柔順にその方法の効果の中に抱擁されることになる。(中村天風、真人生の探求p117)」

「疑い深い人はどうすれば救われるの?」と思うかもしれませんが、自己暗示法を使えば問題は解決されます。どんな人にも手っ取り早く効果が出て、そのうち自己暗示をかけることができるからです。

他面暗示よりも自己暗示のほうが、暗示をかけやすいからです。だって、自分で自分に積極的な暗示をかけるから、疑う心も少ないわけです。

*暗示については「暗示とは?人は暗示の世界に生きているので、悪い暗示に操られないようにしたい件」も参考にしてください。

感想

「観念要素の更改」という言葉は現代的ではないため、ちゃんと理解していないと、中村天風氏の本をよむときの妨げになってしまいます。「真人生の探求」を読むと概念が体系的に説明されているので、ぜひ読んでみてくださいね。

著者

とばひさし とば ひさし
武豊町議会議員、日本維新の会
IT・Web会社の社長
詳細プロフィール

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