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自治体DX推進計画で総務省が推奨する人材と組織体制【広域の開発体制が重要】

2023年08月18日 更新2023年08月18日 公開

自治体DX推進計画で、総務省が推奨する人材と組織体制についてご説明します。自治体DX推進計画を小さな自治体だけ行うのには、開発コストが重すぎます。そのため、広域の開発体制でコスト軽減することが重要です。

自治体DX推進に必要な組織体制

総務省の「自治体DX推進計画(5p)」では、以下の体制を推奨しています。

首長

「DXの推進に当たっては、仕事の仕方、組織・人事の仕組み、組織文化・風土そのものの変革も必要となる中、首長自らがこれらの変革に強いコミットメントを持って取り組む。」

DXに詳しい首長がいれば問題ないですね。DXに詳しくない首長の場合は、CIO以下がDXに詳しいことが必要となります。

CIO

「首長の理解とリーダーシップの下、最高情報統括責任者(CIO:Chief Information Officer)を中心とする全庁的なDX推進体制を整備する。CIOは、言わば庁内マネジメントの中核であり、庁内全般を把握するとともに部局間の調整に力を発揮することができるよう、副市長などであることが望ましい。」

部局間の調整は自治体における大事な仕事ですが、本来のCIOの役割ではないようにも感じます。

ただし、行政の部署間調整するのであれば、副首長くらいの力が必要です。急に入ってきた外部人材だと、役所の人はなかなか動いてくれないと思います。

現実的には、CIO補佐官等がCIOとなり、首長が最終的な判断をするほうが効率的だと感じます。なぜなら、最終的な合意を取るまでに、

「CIO補佐官等→CIO(副首長)→首長」

というフローになってしまうので、行政のスピード感でDX対応が進むことになりそうだからです。1年単位で動いていたら、DXのスピードに取り残されてしまいそうです。

CIO補佐官等

「CIOを補佐する体制を強化するため、CIO補佐官等の任用などの取組を進める。また、CIOのマネジメントを専門的知見から補佐するCIO補佐官等については、外部人材の活用を積極的に検討する。」

CIO補佐官等が実質的なCIOになります。そのため、CIO補佐官選びを失敗すると、自治体DX計画を効率よく、コスパよく進めることは難しそうです。

情報政策担当部門

「情報政策担当部門は、団体の保有する情報資産や情報関係予算を一元的に把握し、重複投資の排除や情報システムの全体最適化に役立てる。」

行政は縦割りとなっていることが多く、横断的に情報システムが重複していないかを、把握できる人は重要です。

行政改革・法令・人事・財政担当部門

「行政改革・法令・人事・財政担当部門は、自治体DXの必要性を十分に認識し、管理部門として、CIO・情報政策担当部門と連携強化を図りつつ、自らDXを推進していく役割を果たす。」

予算ありきになると1年単位でしか動けなそうなので、ある程度の余幅のある予算体制も重要です。自治体DX推進計画の国の変革に合わせて、法令改正も必要になりそうですね。

業務担当部門(特に窓口担当部門)

「自治体DXは、業務改革の契機であることを踏まえ、今後5年間のDXの取組を通じてどのように業務を変えていくのかという観点から、主体性を持ってDX推進に参画する。」

従来のアナログ業務を最初から最後まで、DX化することが最大の目的です。フロント側だけDX対応して、それ以降はアナログ運用のままとならないように、実際に業務や窓口にいる人の改善案が重要になります。

現在もマイナポータルのフロント側だけオンライン対応して、実際の窓口業務はアナログ運用というままのケースは多いです。ここはちゃんとした人がやるべき部分です。

セキュリティ責任者も必要

「情報セキュリティ対策を確実に実施するため、最高情報セキュリティ責任者(CISO:ChiefInformationSecurityOfficer)の設置など、情報セキュリティ対策に取り組む体制の確実な整備も重要であり、連携して取り組む必要がある。」

非機能要件としてもセキュリティ対策は重要です。「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和5年3月版)」も参考にしてください。

自治体DX推進に必要な人材・役割

自治体DX推進のための外部人材スキル標準」で、自治体DX推進に必要とされる人材像が紹介されています。

プロデューサー(CIO補佐官等)

「全庁的な自治体DXの企画・推進。」

プロジェクトマネージャー

「自治体DXを実現するための各プロジェクトの企画・推進。」

サービスデザイナー

「各プロジェクトにおけるサービス・業務の設計。」

エンジニア

「各プロジェクトにおけるサービス・業務の実装。」

とされていますが、財源が乏しい自治体が単独でこの組織体制を構築する場合、プロデューサーとプロジェクトマネージャーは兼務となり、デザイナーとエンジニア採用が必要になると思います。

ただし、国から求められているスキルを満たすDX人材は貴重ですし、これだけの役割の人数を採用すると、人件費も高くなります。

実際には、DX人材を採用する余裕がなく、現在の開発会社に丸投げするだけの自治体は多そうです。

自治体DX推進の外部人材スキル標準を満たす、優秀な人材を採用するのは難しい」も参考にしてください。

デジタル人材の確保が重要

自治体のDX推進では、CIOのマネジメントを専門的知見から補佐する「CIO補佐官等」の役割が重要です。

そのため、ICTの知見を持った上で、自治体現場の実務に合わせた技術の導入の判断、助言を行うことのできるデジタル人材を、確保することが必要とされています。

しかし、市区町村においては、適任者が見つけられないなど、DX人材の確保が課題となっています。

実際に、CIO補佐官等として、外部からデジタル人材を任用等している市区町村は、令和3年9月時点で101団体だけです。

また、自治体の情報化担当職員の確保・育成も課題となっており、情報主管課職員の確保が課題と考える市区町村は、63.6%となっています。

外部人材の任用が可能

自治体は、CIO補佐官等について内部に適切な人材がいない場合には、国の支援等も活用して、外部人材の活用を積極的に検討すべきと推奨しています。

また、職務の内容や量に応じて、任期付職員、特別職非常勤職員として任用することもできます。その場合、

の条件を満たすことで、外部人材を任用することが可能となっています。

DX人材の共有も可能

DX人材の採用は、IT業界でも難しくなっています。限られた人材を有効活用するためにも、他の団体との兼務等を前提とした任用も検討することが、望ましいと推奨されています。

個人的にも、DX人材の共有は重要だと思います。各自治体でこれだけの開発体制を確保すると、自治体ごとに人件費がかかってしまいます。

国が一括で開発すれば安くなるはずのものが、1,718の自治体ごとにシステム開発費用がかかってしまうからです。

ちなみに、市町村数は2023年8月現在で、1,718もあります。1,718市町村が個別で開発するよりも、国がまとめて共通システムを開発したほうがコストは安くなるように感じます。

国が標準仕様をあそこまで作成するなら、この際に国共通のシステムを開発すればいいと思いますが、そこまでやりきれないのが日本のデジタル対応の現状です。

例えるなら、メルカリは国が1個開発すればいいのに、1,718の市町村がそれぞれメルカリを開発しているようなものです。

自治体が独自でシステム開発してしまったから、最初はリプレイスコストがかかるのは仕方ないと思います。

しかし、仕様だけあれだけ定めるなら、国が新しいシステムの入れ物を作ったほうがコストは安いと思います。壮大な無駄なように感じる私がいます。

広域の開発体制が重要

自治体DXではシステムの標準仕様が定められているので、DX人材を共有しながら、広域で共通システムの開発をしたほうが、開発コストは下がります。

国が無理でも都道府県単位でまとめて開発したほうが安上がりだし、開発体制もしっかり整えれば、開発業者任せにならない良いシステムができるように思います。

ぶっちゃけ、自治体DX推進計画は、小さな自治体単体で対応するのは難しいです。そのため、都道府県、指定都市・中核市といった人口規模の大きな自治体、先進的な自治体から支援を受ける体制を作ることが重要です。

また、企業、地域の大学などと連携しながら、自治体DXに取り組んでいる例もあります。

自治体のデジタル人材育成も課題

自治体DXを推進するには、自治体のデジタル人材育成が必要です。自治体DX推進計画では、以下の研修が推奨されています。

具体的にどんな研修をするのか、いまいち見えてきません。

感想

自治体DX推進計画は、国から標準仕様が定められており、多くのシステム改修が必要です。ぶっちゃけ、小さな自治体が単体で行うには、開発コストが重すぎます。

また、各自治体でこれだけの組織体制を本当に準備した場合、国全体でみると開発費用は高くなってしまいます。

実際には、標準仕様が定められており、まとめて開発できるシステムが多いので、広域で開発体制を組むことが大事だなと感じました。

武豊町なら愛知県全体でもいいし、知多半島エリアで広域対応でもいいし、3町合同でやってもいいと思います。

広域でやるべきことは広域でやり、自治体単独でやるべきことは単独でやる。なんでも自治体ごとに縦割りにするべきではないなと感じます。

参考ページ

著者

とばひさし とば ひさし
武豊町議会議員
IT・Web会社の社長
詳細プロフィール

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