積極的な心が大事な理由
積極的な心が大事だということはわかりますが、なんで積極的な心が大事なんでしょうか?実は神経系統や自然良能力に、その秘密が隠されています。
心が大事な理由
命と言えば、身体(肉体)をイメージする人が多いかと思います。また、物質社会の現代に生きていると、どうしても身体を優先してしまうのは致し方ないような気もします。
もちろん、生きる上で身体の健康も重視しなければなりません。それでも、身体より心を優先しなければならない理由があるんです。
「肉体生命の生存と生活の一切が、心の力と作用とで確保されているという一大事実が、厳として存在していることに気づけば、何を措いても、心=精神生命の生活態度を第一に正当に決定することが、人生に対する先決問題だと断定しなければならない(中村天風、真人生の探求p76~77)」
実は、肉体生命は心の力で確保されているという重大な事実があるのです。しかも、その理屈を知れば知るほど、心の積極性が重要なことに気付かされます。
心は命の源である
身体よりも心を優先するべき理由を理解するには、「命の活きている有様」を知ることが重要です。
「命の活きている有様を、一筋の河の流れ同様だと説明している。河というものには、必らずその水源がある。そして、命の流れの水源に該当するものは即ち心=精神なのである。(中村天風、真人生の探求p77)」
「命の活きている有様」とは河の流れと同じで、その水源は心です。水源が心であることを理解するには、肉体生命が活きている理由を研究することが必要です。
臓器は自分の力だけでは働けない
「肉体生命がどうして活きているかという問題について直接的に考えられるのは、肉体生命維持の三大条件(吸酸除炭の作用、栄養の吸収作用、老廃物の排泄作用)ということである。(中村天風、真人生の探求p77)」
吸酸除炭の作用というのは呼吸のことです。息をしないと数分で人は死んでしまいます。また、栄養の吸収や、老廃物の排泄をしなければ、人は生きていけません。この3つの作用がなければ人は死んでしまうのです。
「肉体生命確保に必須な三大条件は、何によって営まれているかというに、俗にいうところの五臓六腑である。(中村天風、真人生の探求p78)」
また、肉体生命は五臓六腑という体内臓器の働きで保たれています。五臓は、肺臓、心臓、脾臓、肝臓、腎臓のことです。六腑は、大腸、小腸、胆、胃、三焦、膀胱のことです。
「体内臓器というものは、どんな種類のものでも、それ自体で働く力はないということである。即ち独自的可動性がないのである。それでは一体どうして、肉体生命維持に必須となる三大条件という微妙な事実を作用するのかというに、それは、丁度あやつり人形の仕かけとほぼ同様な関係で作用しているといってよい。(中村天風、真人生の探求p78)」
ここで重要なのは、体内臓器というのは勝手に動いているということです。自分で意識して心臓や肝臓の働きを変えることはできないのです。心臓を自分で早く出来たり、遅く出来たらやばいですよねw
でも、これってすごいことですよね。勝手に生きているというか、天に生かされているというか、すごいことなんです。
そして、この体内臓器の働きはあやつり人形と同じ仕組みとなっています。そう、まさに鏡の中のマリオネットなんです。
神経系統はあやつり糸
「体内臓器もこれ(あやつり人形は操り糸の操作で動く)また同様で、操り人形における操り糸の如くこれを動かす機能が別に存在していて、一見独自的の可動性で作用するかのように、あの微妙な作用を行うのである。
それでは、体内臓器に対する操りの糸ともいうべき不思議な機能とは、一体何かというと動物性、植物性という二大別をもつ神経系統のことである。そこで、万一神経系統のどれかに、故障なり、不完全の点があるとしたら、体内臓器の諸作用もまた当然その働きを、円滑に行うことが不可能になる。それは操り糸のどれかが切断したり不完全であるとき、操り人形が完全に所作することのできないのと同様である。(中村天風、真人生の探求p79)」
体内臓器はあやつり人形と同じで、体内臓器のあやつり糸に該当するのは神経系統です。ストレスフルな生活をしていて胃が痛むという人は多いですよね。これは神経系統が消極的になるように操っているので、胃が痛くなると考えることができます。
神経系統が体内臓器のあやつり糸だということがわかれば、神経系統が重要であることがすぐにわかるかと思います。あやつり糸が切れてしまったら、まともに人形は動かないわけです。これが人間も同じだとすると、とても恐ろしいことだと思いませんか?
病を治す自然良能力も神経系統にある
「病を治す根本要訣は、この自然良能力の完全発動を促進することを先決問題とするので、対症療法だけでは、どれほど入念にこれを施行しても、到底所期の効果を理想的にすることは不可能なのである。(中村天風、真人生の探求p80)」
病を治すのも、実は神経系統が重要です。病を治すコツは体内にある自然良能力を発揮させることです。しかし、現代人は病を治すには対症療法が全てだと思ってしまいます。薬やらサプリやら飲んだら病気は治ると思っているのです。
もちろん、対症療法もある程度には必要です。しかし、対症療法だけで全ての病気が治るわけではないのです。
病気を完全に治したいのであれば、体内に存在する自然良能力を完全発動させなければならないのです。対症療法なんかより自然良能力の方が圧倒的に重要なんです。では、この自然良能力はどこにあるのでしょうか?
「自然良能力というものは、体内のどの部所に存在しているかというと、これまた神経系統の生活機能内に、厳として存在しているものなのである。このような確固とした事実を論点とするとき、まことに神経系統というものは、取りもなおさず、生命確保の中枢的存在だと結論される。(中村天風、真人生の探求p81)」
例えば、内臓が病気になったとします。内臓の病気を治すための自然良能力は内臓にあると思いますよね。でも、内臓それ自体に自然良能力は存在していないのです。
実は自然良能力は「神経系統の生活機能内」に存在しているのです。だから、神経系統が生命確保で重要だと結論付けているのです。
私がこれ読んですごいなと思うのは、中村天風氏の時代って、まだまだ精神の重要性が低い時代だったのに、今と同じ精神面の重要性を訴えていることです。
しかも、こんなにわかりやすく説明してくれるから、神経系統の重要性が腑に落ちるんですよね。リスペクト過ぎる。
ちなみに、「自然良能力」とは最近の言葉で言うと「自然治癒力」に該当するかなと思います。「自然良能力」で検索すると天風氏の意図とは関係ない団体のページが出てくるのでお間違えないように!
気も神経系統内で作用している
「人間の命は気という原始的エレメントが、命の力(Vril)の根源となり、ここに一個の生命体というダイナモを作為し、更にこのVrilがそのダイナモに受入れられたものが、電気の場合と同じく、生命諸般の力となるべき第二次的原動力要素というものを作成すると述べた。ところで、この第二次的原動力要素というものも、やはり、神経系統の生活機能内で、特殊的に作用しているものなのである。(中村天風、真人生の探求p81~82)」
ちなみに、人間を動かす気の力も、神経系統内で作用しています。自然良能力だけでなく、自分を動かす力が神経系統にあるとわかれば、神経系統の重要性をより理解できるかと思います。だから、積極性が大事なんですよね。
神経系統は心に支配されている
「神経系統の一切の作用は、どういう機能によって支配されているかというに、これを直接的にいえば、中枢神経である。そして、中枢神経は何によって営為の支配を受けているかといえば、脳髄府である。(中村天風、真人生の探求p82)」
脳科学や神経科学のお話になりますが、神経系統は中枢神経に支配されています。
「大脳、小脳、延髄とを保有する脳髄府こそは、精神作用=心の働きを、生命の内外に現実表現する厳粛な一生命機関なのである。ということが、自己の意識領に明確に認識出来たなら、更に、今まで説いた生命現象を順位的に考えれば、心=精神こそ、生命の流れの源頭だということを、突嗟!無条件に合点されると思う。(中村天風、真人生の探求p83)」
そして、中枢神経を支配しているのは脳髄府である大脳、小脳、延髄となります。脳が人間生命に大切であることは、脳の重要性が叫ばれている現代ならすぐにわかるかと思います。
また、いろんなことは脳で考えていることも、何かを考えると頭の近くでイメージが浮かぶことからわかると思います。
そして、脳は「精神作用=心の働き」を表現する生命機関です。「心」でもある脳が中枢神経を支配しており神経系統も支配しているということがわかれば、上述した「命の活きている有様」である河の流れの源泉が心であることもわかると思います。
*脳髄府は古い言葉になるので、最近の脳科学ではあまり見かけない言葉です。ただ、脳科学の理論うんぬんよりも概念理解が大事なので、そういう知識的な指摘はスルーしましょう。
天風氏のお話はそういう枝葉末節である知識的な話よりどんな生き方をすればいいのかw理解するほうが重要なのです。私も理系人間ですが、そんな知識的な話は合っていようが間違っていようがどうでもいいのです。それよりも大切なことがあるのです。
だから、積極的な心が大事
「心の力が減退すれば、生命確保の第二次的原動力要素を保有する、生命維持の中枢ともいうべき神経系統がその生活機能を減退してしまう(中村天風、真人生の探求p85)」
心の力が弱くなると神経系統も弱くなるので、命の力も弱くなってしまうのです。だからこそ、積極的な心が大事になってくるわけです。
感想
このあたり完全に理解するには、中村天風氏の本を読むことが必須です!「真人生の探求」が一番わかりやすいので、ぜひ読んでみてくださいね。感覚的なことは、本でしか学べないのです!